いっきにすべてを解決できる魔法の杖は存在しない

いったんは、すべてシンプル思考で明確にして、解決すべき問題を絞り込み、行動すべきことも見えてきた人でも、いざ行動に移ろうとするときに迷いが生じることもあります。

「ホントにこれでいいのか?」と。「あきらめていいのか?」と。その気持ちの根底には常に「もっと楽でいいやり方があるはず」という思い込みがあるのです。一瞬で部屋をすべてきれいにしてくれる掃除術があるのか。あればいいな。探してみようかな。そんな風に思ってしまうことも多いでしょう。

あらゆる問題をいっきに解決できるような魔法の杖は存在しません。このことはしっかり覚えておきたいことです。なぜなら、問題というものは、解決できそうな道筋が見えてきたとたん、これまで見えていなかった新しい問題を生み出すからです。

掃除ややめる。片付けだけしてゴミを捨てておこう。いや、まてよ。今日はゴミを出していい日だっただろうか? いや、だめだ。今日出してはいけない。資源ゴミしか出せない。ではほかのゴミはどうしよう……。

解決しそうに見えても、そこには新たな問題があり、それが思った以上に難問だったりします。ゴミは袋にしっかり入れて一時的にベランダに出しておこう。そして、こうなったらできるだけ早く、部屋から出て、どこかへ場所を移した方がいい。どこにしよう……。おっと、財布にいくら入っていたのか。ATMへ行かなければ……。

問題は次から次へとやってきますね。でもシンプル思考で対応していくことです。どんなスマッシュが打ち込まれてきても、拾う。返す。拾って拾って返しまくる。それぐらいの気持ちで、一つずつ解決してきましょう。

実はシンプル思考は、いっきにすべてを解決する方法を探したりはしません。そのような夢のようなものを求めるために時間を費やすことはしないのです。もっと現実的に対応していきます。魔法には期待しないのです。

行動を早くすることで、試行錯誤ではありませんが、どんどんムダを減らして、最高の解決に向かっていくのです。また、シンプル思考は、わかりやすいだけに、常に原点に立ちかえることができます。

「目的は恋人をちゃんと迎えて、印象よく対応できたら、あとは親密度をアップすること」と思っていれば、部屋の掃除だけにこだわるはずがないのです。そこに留まっている限り、あと1時間30分で来る恋人のために、最善を尽くしたとは言えません。

お湯をわかし、お菓子を用意し、余計なものが目につかないように隣の部屋に押し込んでおく……。そうだ、トイレのタオル! トイレットペーパー……。

このように、最善を尽くすためにはいろんな気配りが必要になってきます。シンプル思考は気配りの考え方ともいえます。先に述べた、根回しであるとか察することは、気配りとして考えることができます。気配りができれば、しっかり相手に伝わるかもしれません。

では、気配りはなんのためでしょうか。自分のため? 相手のため? 利益のため? それとも印象のため? 好感度? なんのために気配りをするのかは明確にしておいてください。そうすればシンプル思考で、いつでも原点に戻れます。「相手のため」と決めておけば、迷ったときはその原点に戻る。余計なことは後回しでいいのです。

どうせ一度にすべてを解決できないのなら、せめて一つでも多く解決しておきましょう。目的(相手のため)にかなう行動を最優先にすればいいのです。