シンプルにしたときに大切なことは周囲の理解だったりする

シンプルにすると、なんでもわかりやすく、伝わりやすくなります。理解されやすくなります。だからといって、納得性が高くなるとは限りません。ここはとても重要なポイントなので、ぜひ、よく考えてほしいと思います。

たとえば「逃げろ!」と言われてすぐ動けるかといえば、「なんで?」「どこへ?」といった疑問がわいてきて、むしろ身がすくみ、逃げ遅れる可能性があります。具体的に「階段へ逃げろ」とか「部屋に入れ」と言われれば、まだ動きやすいでしょう。

シンプル思考にもこれに似た点があります。「顧客満足を最大にしよう」といった、いわば会社のスローガンがあったとします。言葉としてはシンプルでわかりやすい。誰もが意味は理解できます。でも、それがどんな行動に結びつくというのでしょうか?

「お客様に3回挨拶しよう」といった方が、具体的な行動に結びつきやすいのですが、しっかりと「なぜそうするのか」を教育しないと納得して行動してくれません。

つまり、シンプル思考は、いろいろあるけど、一番スッキリした道筋として描かれたものですから、間が抜けていたり、周辺情報がなかったりするので、納得しにくい場合があり得るのです。むしろ誤解され、反発を招くこともあります。

シンプル思考の得意な人ほど「どうして、こんな簡単なことがわかってくれないのか」と思うことでしょう。あげくに「黙って言うとおりにしろ」と言ってしまうかもしれません。こうなると、せっかくのシンプル思考も、結果に結びつきにくくなっていきます。誰だって頭ごなしに言われて、「はいそうですか」と全力を尽くしたりはしないのです。「なに言ってんだ」と反発する気持ちが強くなると、実力の半分も出ないでしょう。

シンプル思考の例としては、スポーツが極めてわかりやすいでしょう。野球でもサッカーでもチームプレーになると、いくらシンプル思考で「こうすれば勝てる」と言ったところで、現実にはチームとしてそれをやり切れるかどうかは、未知数です。

わかりやすいが、納得しにくい。納得できたが、実力が伴わない、といったさまざまな要因が生まれて、思ったほどの成果に結びつかないことはよくあることです。

こうした事態を少しでも避けるために、シンプル思考でいくからには、できるだけ丁寧に周囲の人たちを味方にしていく努力が大切となります。応援してくれる人、一緒に行動してくれる人が、少なくとも理解して納得して賛同してくれなければ、結果に結びつきにくいからです。

加えて、やりたいことの周辺にいるほかの人たち(ビジネスなら顧客や取引先など)も、納得してくれれば成果はより達成しやすくなるでしょう。

シンプル思考で近道をしようというわけですから、こうした手間はむしろ時間をかける余裕があるはずです。それを惜しまないようにしたいものです。短絡思考はこうした手間さえも惜しんでしまうので失敗する確率が増えてしまいます。シンプル思考は、しっかり準備をします。だからこそシンプルさが活かせるのです。