失敗と成功のどちらを歓迎するとすればもちろん失敗こそ大歓迎

シンプル思考は、より早く、もっとも効果的な行動を起こして、ゴールに向かっていくことです。ですが、必ずしも成功が約束されているわけではありません。むしろ、「必ず成功するとは限らないからこそ」シンプル思考で、素早く効果的な行動を起こすのです。

ということは、「失敗する可能性がある」のです。たいがいのことには、失敗の可能性があり、人はそれを「リスク」と呼んだりもします。リスクは軽減できるものもあれば、できないものもあります。個人で対応する問題の多くは、リスクを軽減しにくいものが多く、リスクを軽減する場合にはかなりのコストがかかります。

保険がいい例で、リスクのために個人で入ることのできる保険は、いろいろなリスクに備えれば備えるほど、毎月の賭け金も大きくなってしまいます。そこで、リスクを絞り込んで、支払える範囲の保険で対応するしかないのが現状です。「保険に入ってる」といっても、この点では人によってリスクの軽減度合いがかなり違うと考えていいでしょう。

つまり、失敗はつきもの。そして失敗するリスクはあまり減らせない。だから失敗を受け入れて、素早く立ち直る必要があるのです。と同時に、失敗を恐れないことです。小さな成功を積み重ねると、モチベーションが高まり、周囲への説得力も増すのでゴールに近づきやすくなると以前にお話しました。

でも、失敗も大切なことです。検証したり反省するまでもない失敗も、実は成功よりも重要なときがあります。エジソンは、失敗するたびに「これで成功に近づいた」と考える人でした。失敗する方法を誰よりも早く知れば、二度と同じ失敗はしないので、成功に近づくわけです。

ちょっと負け惜しみのようにも聞こえますし、事実、これは悔しさをバネにするという意味で、負け惜しみなのです。そして、この失敗は、「いくら自分でベストだと思って取り組んでも失敗する可能性がある」ことを、教えてくれます。人は成功を重ねると、このことを忘れがちです。成功の要因もさまざまで、プランがよかった、人がよかったといったことのほかに「たまたま」もあれば「他力」もあります。偶然、援助してくれた、偶然、いい人と出会えた、などなど。

成功の要因の中には再現性の低いものも多く、大きな成功ほど、偶然の要素が大きなものです。ノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオードの発明や実用化も、偶然の要素は大きなものがありました。もっともその研究開発を信じてやり続けた人にしか、その偶然は訪れませんし、偶然を活かすこともできないわけですから、偶然の成功も含めて、成功はその人の成果だと言えるのです。

ただ、偶然は再現性が少ないので、取り組む勇気を与えてはくれますが、検証してもあまり役に立たないことも多いものです。ですから、成功はもちろん歓迎なのですが、そもそも「ゴールする」ことを信じて取り組んだのですから、当然の帰結です。

一方、失敗の中には、とても重要な示唆を含むものがあります。失敗する方法を学ぶことができれば、次には同じことをしなくてすみます。失敗の原因から、成功するための新たな条件が見つかることもあります。失敗しなければ、見えないこと、わからないこともたくさんあるのです。

こうした点で、ただ慰めのためではなく、失敗は大歓迎していいのです。シンプル思考は、ある意味、大胆な行動を促すこともありますので、失敗の可能性もそれだけ大きくなります。それもあらかじめわかっていたことです。失敗を受け入れて歓迎する気持ちを持つことで、くよくよすることなく、ムダな時間を過ごすことなく、次に取りかかることができます。