積み残した問題をあとから振り返ってみればわかること

シンプル思考は、このようにたとえば「原因はわからない」としたままでも、ゴールに向かって進むようなパワフルな考え方です。枝葉末節は後回しにします。優先順位の低いものは後回しにします。

ただし、くれぐれも、これは「ドライに割り切る」ことではありません。人間の心はそう単純ではないのです。割り切れない思いが残ります。ひっかかりが残ります。スッキリしない気持ちが残ります。

こうしたものは、ゴールに向かっている間はとりあえず保留して、進めるだけ進むわけですが、ゴールしたあとには考慮してもいいことです。「いまさら」とか「蒸し返すのか」と言われたとしても、人間は心があるから人間なのです。ゴールすればすべて忘れるというわけにはいかないのです。生きている限り、気になることは気になるのです。

それでも、ゴールしてみると、周囲の景色ががらりと変わることはよくあること。ゴール寸前までは、あれだけ苦しかったのに、ゴールしたとたん、体がすごく楽になっていることも多いのです。それだけ、ゴールに向かって進むことそのものが、大きな負担になっていたのです。

前に進むことそのものが、大きな負担なのですから、そのときに、それ以上の重荷を負う必要はありません。宅配便で先送りしておけばいいのです。「向こうに着いたら、開けてみればいい」と。

さてゴール。進むための重荷はもうありません。ゆっくり、以前に送っておいた荷物を開けることができます。ですが、全部を開けなくてもいいかもしれません。ゴールしたときには、問題の多くは解決しているはずです。解決した時点から見れば、いまさら考える必要のないことも多いのです。

同時に、「あれはこういうことだったのか」と腹に落ちることも多いでしょう。それまであったわだかまりが、当時の追い詰められた中での感情的な問題や、誤解、すれ違いなどから生じたものであって、ゴールしてしまうと「バカバカしい」とわかったりします。

学生の場合は、テストの前によく生じることです。「これが解決しないとテストで困る」と思い詰めるようなこと。もちろん、時間がないのでモヤモヤしたまま放置せざるを得ないのですが、テストが終わってしまうと「あんなこと、なにも関係のないことだったんだ」と気づいたりもします。

ただ、進行中のときは「気になってしょうがない」という場合もありますので、とりあえず「ゴールしたら開けること」といったノートを作るなどして、気になることや、解決できない問題、究明したい原因などをメモしておくといいと思います。

ゴールしたあと、そのメモを見て、いまでもやっぱり重要だと思うことには、取り組んでみることです。それ以外はもう、取り組む必要はないでしょう。むしろ「こんなどうでもいい問題に取り組まなくてよかった」と安堵してもいいと思います。それだけ時間も労力も節約できたのです。これはシンプル思考をやっていくと、しだいに身についてきて、いずれは最初の段階で「これはやらなくてもいいかも」と直感で判断できるようになる人もいます。