問題は解決してもまた新たな問題になっていくものなのです

シンプル思考では、誰よりも早くゴールに辿り着くために、もっとも重要なところ、またはもっとも効果の高いところから、解決していくことになります。そしてわかりやすいので、ほかの人たちにも伝えやすく、方向性を揃えやすく、誤解を受けにくくする効果もあります。

シンプル思考で取り組んでいる解決策では、やりながら新たな問題も発生していきますし、当初は気づかなかった側面を発見することもあります。それだけ、早く問題に取り組んでいるので、新たな問題も発見しやすくなります。

これは大きな高い壁に直面したときに似ています。いま見えているのはその壁だけなので、私たちはなんとか乗り越えるか、ぶっ壊して通り抜けるかしなければ先に進めません。ここで問題になるのは、先に進む方向として、壁の向こう側でいいのかどうか。壁に沿って移動する手もあるでしょうから。

または正面から突破するにしても、登って乗り越えるのか。穴を開けるのか。地面を掘るのか。どの方法が優れているか、考えなければなりません。登ろうとしても壁の高さが目視できているのならまだしも、上がよく見えないなら、登れるのかどうかもわかりません。穴を開けたくても、厚みがわからない。地面を掘って潜り抜けることができるのかもやってみなければわかりません。

もっとも楽なのは壁に沿って移動してみることです。それによって景色が変われば、壁の別の面が見えて解決につながるかもしれません。とはいえ、必ず側面が見えるとは限りませんし、どこまで移動していいのかもわからないのです。

情報をいっぱい集める時間をどの程度、とるのか。そしてこうした探査をやってみて、壁についてもっと知ることができれば、新たな問題が次々と出てきます。

この壁をもし克服したとしても、それで終わりではありません。壁の向こう側にはまた別の壁なり溝なり、障害物があるのです。最初の問題が、カタチを変えてまた現れることもあります。

プロジェクトを遂行するにあたって、行動の妨げになる問題をクリアしていき、プロジェクトが動き出すと、今度は動き出したプロジェクトから新たな問題が発生してきます。動くと、さまざまな軋轢や摩擦、損傷なども起こります。あまりにもきついと、私たち自身が消耗していってしまう場合もあります。

問題は解決しないと先に進めませんが、解決したからといって、そのあとはずっと楽ができるわけではありません。そのことを考えれば、目の前の問題に全力投球するのもいいのですが、そこで力尽きてはいけないのです。

つまり、つぎつぎと新たな問題が出てくることを前提に行動しなければなりません。シンプル思考は、決断を早め、行動を促進する分だけ、体力や時間に余裕をつくりやすいと言えます。

「なにがなんでも」と取り組む瞬間も大事なのですが、いつまでも続けることは難しいので、どこかで「ここまで来たら再考しよう」という地点を設けておき、一息ついてほかに新たな問題が出ていないか、それによっていまの行動を変えなくてもいいのか、ということをチェックしていきたいものです。よく経営では「ダッシュボード」と言いますが、運転するときに、正面と計器だけを見るのではなく、バックミラーやサイドミラーもチェックする必要があるのと同じです。